伝統的にシャトーヌフ・デュ・パップでは醸造はコンクリートタンクで行われる。が、80年代以降、ステンレスタンクの使用が増えてきた。というのは清掃がしやすいので衛生面において管理がしやすく、テクニカルの面においてはより醸造コントロールをしやすい、と言う利点があるのだ。ここ近年では原点回帰なのか、以前のようにコンクリートタンクを好む傾向 にある。
その理由はコンクリートタンクの品質が素晴らしく向上したことにある。タンクの内側は樹脂素材が施され、清掃がしやすくなり、またタンクのその分厚さから温度管理がしやすいという利点も見直されてきている。
ぶどうをタンクに仕込む作業だが、2つの方法がある。1つ目は異なるぶどう品種をミックスしてタンクに仕込むことによって、それぞれの持ち味を発揮しながらも調和の取れたワインに仕上げていく方法、もう一つは各品種ごとにそれぞれの個性を生かしながら醸造し、最後にブレンドするという方法である。
また最近の傾向として挙げられるのは、木製又はステンレスの円錐台形型のタンクを使用して醸造を行うことがある。この形のタンクは底が上部分よりも広いので、マールの果帽がジュースに浸かる割合がより多くなり、マセラシォン効果がより高い、と言う利点がある。またこのタンクからは木のもたらす香りやタンニン分が通常よりも柔らかく、複雑性に富む、という評価もある。コンクリート製のタンク同様、このような木製のタンクにも温度変化が少ないという利点があり、熟成用としても好まれて使用されている。熟成庫の中に大きな木製の樽が並ぶ様子はなかなか荘厳な雰囲気をかもし出すものだ。
赤ワインの醸造は、生産者の望む色合いやタンニンの状態にもよるが、平均すると10日から25日間ほど続く。醗酵終了後は、まずヴァン・ドゥ・グット、フリーランジュースとして液体が別タンクに移される。タンク内にあるマールはプレス機にかけられ、プレスジュースが取られる。フリーランジュースとプレスジュースはその後同じタンクに入れられて最終的な醗酵を終えることもある。その後マロラクティック醗酵が行われる。これによりりんご酸が乳酸へと変化し、ワインの味わいや香りがまろやかになり、ワインが安定する。
これらの行程を経てワインは熟成段階へ入る。
白ワインの醸造期間はより短い。ぶどうは収穫後、除梗破砕され、すぐにプレスされる。絞られたジュースはタンク内でデブルバージュ作用を経て、アルコール醗酵が始まる。マロラクティック醗酵をするところもある。熟成はタンク又は木樽内で数ヶ月間のみ行われる。