いつの時代もワインは祭り事に欠かせない。シャトーヌフ・デュ・パップでは生産者達は畑仕事の区切りの頃にワイン関連の祭りを開いている。毎年それらの祭りには多くの観光客がやってくる。
サン・マルクは生産者のお祭りである。4月25日に行われるこのイベント、もとは宗教的意味合いもあり、田舎風で誰もが楽しめる祭りであった。その昔は、夜明けにぶどう畑を通り、村のサン・マルクを祭る3つの礼拝所へ向う行列が行われた。その偶像は教会から出され、村の若い生産者たちによって担がれ運ばれた。昼には村人達はレルスの塔へ集まり、皆で食事をした。生産者達は自分のところの最も美味しいワインを持参して皆に振る舞い、その祭りは夜暗くなるまで続いた。
今日、アペラシォンの生産者達のワインコンクールが行われている。プロの審査員が生産者やドメーヌの名を見ずに見た目、香り、そして口中での味わいのチェックをし、選りすぐれたキュベをセレクトしていく。結果発表は生産者やネゴシァン、村議員、シャトーヌフ・デュ・パップのワインの愛好家100人以上もが参加する食事会の際に行われる。前年度に収穫されたぶどうからできた赤白ワインと3年前のヴィンテージの赤白ワインの各1本ずつ、計4本が選ばれる。生産者にとってはここでセレクトされることは最高の栄誉である。ここで選ばれたワインの生産者たちはその証書を大事に額に入れ、ワイン直売所に飾っている。
リュクサンブルグのサン・ピエールの行進
ヴェレゾンとは畑のぶどうの色つきが始まり、赤ぶどうは赤色に、白ぶどうは黄色っぽく熟し始める時期のことをさす。シャトーヌフ・デュ・パップでは8月第1週目にこのビッグイベントを開催する。2日の間、生産者達は村のスタンドや村の地下にある直売所でワインの試飲を行う。中世を髣髴させる行進や、14世紀の教皇庁と村を結びつける歴史的テーマでのスペクタクルが開催される。住人達は当時の服装を身にまとい、行進をする。毎年このイベントには数千人もの人々が訪れ、昔ながらの職業やそこに伝わる道具類などに触れている。
昔からぶどうの収穫開始の合図は村ごとに行われてきた。ぶどう畑を回った後、話し合いと重要な食事会の場が設けられ、異なる土壌区画から採ってきたぶどうを味見し、収穫開始日が決定されてきた。
これは当初、ぶどうの盗難を防ぎ、10分の1税の準備をしやすくするための意味合いがあった。革命後しばらく後もこの習慣は続いた。この頃にはワインのクオリティを保証することが目的であった。その後放棄されるが、1856年にジョン・キオ村長の“クオリティ高いワインが生産されない未熟ぶどうの収穫や切り残しぶどうを取ったりするのを避けるため”という呼びかけで再開する。その後またしばらくするとこの習慣は消えてしまう。が1962年生産者組合の呼びかけで再度見直しがされる。9月の間、生産者やその招待客たちは重要な食事会のために集まり、昔のようにぶどうの試食をし、熟し具合を確かめるのである。収穫開始の合図はアペラシォンの中でも最も若い生産者によって発表される。
シャトーヌフ・デュ・パップ生産者組合連盟は1963年に創立された。この組織は1923年にアペラシォン区画と生産条件について制定した生産者組合を母体をしている。
組合連盟はシャトーヌフ・デュ・パップの名前と生産者の利得を弁護保護すると言う基本的な役割がある。生産者達にはより一層の質向上のためのサービスや物質提供を行う。またフランス国内や海外市場へのプロモーションも行う。
ラ・メゾン・デ・ヴィンニュロンには組合連盟の事務所や最新の機器が設置されたワインラボがある。AOC認定のための試飲やジャーナリスト達の受け入れのための試飲ルームも整っている。
1967年にフィリップ・デュフェによって設立されたレシャンソヌリ・デ・パップ(直訳は法王の酒処、ワインの給仕係)という生産者による組合は、フランスの偉大なアペラシォンの中でも、シャトーヌフ・デュ・パップのワインの持つ個性と知名度をより価値付けることを目的としている。 偉大な過去の思い出を生かし続けることは重要である。ここで行われる礼法は当時の法王庁でのやり方に基づき、エシャンソン達が重要な客人たちにワインをサービスしていく。
このコンフレリ(同業者組合)は、創設者である55人のグラン・エシャンソン、グラン・カメリエ、エシャンソン、グラン・エシャンソン・ア・カメラ・パラメンチから構成されている。
その就任式はシャトーの法王のためのカーブで行われるが、異なる旗や幟が飾られ、明かりが灯される。式は厳粛なまでの雰囲気で行われるが陽気さや共歓の気持ちは忘れない。候補者紹介においてメンバー達はウィットとユーモア溢れる表現で会場を沸かし、《 美味しく偉大なワインは笑い楽しみ、縦笛やコルヌミューズに合わせて踊りたい気持ちになる 》ということも忘れない。新しく就任した仲間は友情の印と
して、《 ワイン貯蔵庫と心の道への鍵 》を受け取る。
そして最後には素晴らしいディナーがあり、就任式は幕を閉じる。
毎年シャトーヌフ・デュ・パップのコンフレリは各国からの様々な分野の人々を新たなメンバーとして受け入れている。彼らは法王のワインの大使となって世界中にその名を広める役割を果たしている。